Q. 遺産分割協議書により一部の相続人甲が特定の不動産を取得することになり相続登記をする場合、法定相続人全員、甲、乙、丙が遺産分割協議書に実印を押印して印鑑証明書を添付しなければならない。遺産分割協議は成立したが、法定相続人のうちの一人である外国人乙が遺産分割協議書に署名はするもののサイン証明書の提出に協力しない。登記をするには、どうしたらよいか?
A. そもそも、乙は遺産分割協議書に署名をしているのだから、協議内容には同意しているはず。サイン証明書の提出に協力しないことなどあるのか? 乙は、不動産を取得しないし、相続財産に関心が無い場合、署名はするけれども、サイン証明書を取得する手間はかけたくないということもある。
さてでは、どうしたらよいのか? 相続人のうちの一部の者が、実印の押印を拒んでいる場合に関する登記先例がある(平成4年7月29日東照第1826号東京弁護士会会長照会、平成4年11月4日付け法務省民三第6284号民事局第3課長回答)。
その要旨。遺産分割により特定の不動産を単独で取得することとなった者は、押印を拒んでいる者に対する所有権確認訴訟の勝訴判決及び遺産分割協議書(他の相続人らの印鑑証明書付)を添付し、単独で遺産分割による相続の登記を申請することができる。
本件ケースにおいても、甲の弁護士が乙に対して所有権確認訴訟を提起して勝訴判決を得たので、その判決正本と遺産分割協議書(他の相続人らの印鑑証明書付)を添付して登記申請をした。前記登記先例とパラレルに考えられるケースだろう。
ところで、外国在住者を相手方として訴訟を提起するのは、困難を伴う。先ず、送達をするために、非常に時間を要する。本件でも欠席裁判になることはわかっていたが、外国送達に時間を要して勝訴判決をとるのに時間がかかった。